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Sarah-Gem Blog
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熊本市でジュエリーサロンショップ「セーラ・ジェム」を経営する伊藤和のブログです。

by sarah-gem
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About Me
熊本市在住
≪Gemology≫
1976年、宝石の仕事に初めて携わる。
1978年、国内鑑定所で資格取得。
1983年、GIA(米国宝石学会)にて Graduate Gemologist資格取得。
1986年、独立してセーラ・ジェム開業。
≪Ecology≫
ジュエリービジネスを始めて、宝石が自然の賜であり、環境保護がいかに大事であるかを痛感。ボランティアでエコロジー活動に取り組み始めた。
≪Ufology≫
1962年、高校2年の時、ジョージ・アダムスキーの「空飛ぶ円盤同乗記」を読み感動。UFOに関心を持ち始める。その10年後、UFOを目撃体験。以後、UFO研究をライフワークとする。
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ヘルマン・ヘッセ全集(臨川書店)第一回配本 第4巻 『車輪の下』から
 今年(2005年)は 『車輪の下』 発刊より、100周年に当たるとのこと。

私にとっても、ヘルマン・ヘッセのいくつかの作品は、まさに「わが青春の書」ともいえる、
今も手にとれば胸の熱くなる思い出の書です。

今春4月から、新たに京都の臨川書店より、ヘルマン・ヘッセ全集(16巻)発刊がスタート
しました。
( くわしくは、ブログのリンクにあるヘッセ協会の内容をご覧下さい )

ここでは、第一回配本第4巻 『車輪の下』 の解説と、第4回配本第10巻の付録から、
殊に印象的だった 訳者の所感 を紹介したいと思います。
ヘルマン・ヘッセ全集(臨川書店)第一回配本 第4巻 『車輪の下』から_a0063658_1239338.jpg


 第4巻 『車輪の下』 解説( P.367―370)より 抜粋

         
       P.368
        しかしながら、今回『車輪の下』を訳してみて、やはり
       この書はヘッセの代表作のひとつであり、そればかりか
       世界文学中の傑作のひとつであるという確信を、改めて
       深めずにはいられなかった。

       訳しながら、いままで同書に対して抱いていた印象がこ
       とごとく塗りかわっていくことに、終始驚きを抑えられなか
       った。

       まず意外だったのは、全体にただよう雰囲気の<明るさ>
       である。中学・高校のころに読んだ記憶では、一少年が
       ひたすら受験勉強とつめこみ教育とに苦しんでいる、とい
       う悲劇的な印象しかなかった。

       が、あらためて読んでみると、平明簡潔でみずみずしい文
       体もさることながら、随所に散りばめられたユーモアの絶妙
       さに思わず引きこまれている自分がいたのだ。たとえば・・・

       P.369
       それにしても、この小説がいうところの<車輪>とはなんの
       象徴なのだろうか。それを読者各々に考えてもらうのが作者
       の意図だろうから、余計な解説は不要かもしれないが、ひと
       つの解釈例として(つまり、他にもいろいろな解釈が可能な
       ので、ぜひ挑戦してほしいとの意をこめて)訳者の考えも
       記しておこう。

       先ほどの引用文を、もう一度見ていただきたい。三行目に
       「ハンスは、この権力者が差しだした右手のなかに、自分の
       手を置いた」とある。校長が<権力者>と表現されているこ
       とを見逃さないようにしたい。というのも、じつはこの小説の
       全体にわたって、教育は<権力>の営為として描かれて
       いるからだ。

       たとえば一章では、物語の開始早々、ハンスを待ち受ける
       <受験>について、「国家がその知的な人材を引きぬく、
       年一回の 『いけにえの儀式』 だった(5頁)と書いてあり、
       びっくりさせられる。

       また三章では、親たちがわが子の入学式に参列する場面
       で、「自分(父親)はきょう、金銭の利益と引きかえにわが子
       を国に売りわたすのだ、などと考える者はひとりもいなかっ
       た」(53頁)とあり、毒舌ぶりに度肝を抜かれる。

       もちろん、これらの叙述の背景には、貧しい家庭の秀才を
       試験で選抜し、無料で神学校教育を受けさせるという、南
       ドイツ・ビュルテンベルク州の伝統的制度がある。が、ヘッセ
       はその筆鋒を故郷の州にだけ向けたのではない。

       二章にはこんな記述もある。
       (・・・・・・)  学校の役目とは、政府の側で正しいとされ
       る原則にしたがって、自然のままの人間を社会の有用
       な一員にし、やがて兵営での念入りな訓練が完ぺきに
       最後の仕上げをしてくれるような性質を、その人間の
       なかに目覚めさせることなのだ。(41頁)

        なんとも激しい弾劾に驚かされるが、このときヘッセ
       の年頭にはドイツ帝国の軍事制度(戦前の日本はこれを
       手本にしたのだから、けっして他人事ではない)があった。

       1871年に、22の領邦国家と3つの自由都市が統一して
       ドイツ帝国が成立すると、それまで領邦国家だったビュル
       テンベルクは「州」となり、以後、同州の若者たちは帝国の
       兵士として徴兵された。

       ヘッセが神学校を受験した1891年から、『車輪の下』が
       出版されるまでの15年間は、この帝国がウィルヘルム2
       世の指導の下、世界第一級の経済・軍事大国にのし上が
       った時期とぴたり符号する。

       そうした過酷な時代においては、大人の価値観を一方的に
       植えつけるような教育は、富国強兵の道をひた走る国家の
       車輪とはなりえても、子どもたちの真の味方にはなりえない。

       20世紀の開始時点でこの重大問題に気ついていたがゆ
       に、ヘッセは二度の世界大戦期にも自己を見失うことがな
       かったのだ。(なお、『車輪の下』を連載した新チューリヒ
       新聞は、ドイツ帝国主義に距離を置いていた良心的メディ
       アだった。)

       ―こうしてみると、『車輪の下』は単に受験制度やつめこみ
       教育を批判した本でもなく、ましてや少年期を回顧しただけ
       の後ろ向きな本でもない。

       教育が大人のエゴイズムの道具と化し、そればかりか国家
       の奴隷もなり下がってもいることを、帝国主義の病理として
       告発=批判した<警鐘の書>であり、その警鐘は現代も
       なお意味を失っていない―そう考えるが、読者の皆様は
       いかがであろうか。


     第10巻 付録 「新訳 『車輪の下』で心がけたこと」 から 抜粋

       ― 個人的には古い訳に親しみもあるのだが、(邦訳もすでに十数種ある)
       二十一世紀を迎えた今、新しい世代のために新しい訳が必要かもしれない
       と思った。仮にヘッセが現代日本の作家であればどんな日本語で書くだろ
       う?―そう自問しつつ、苦しくも楽しい翻訳作業を進めた。訳文を学生たち
       に読んでもらい意見を求めたことも度々あった。

       ―胸に染み入るような美しい自然描写をじっくりと味わっていただければ
       幸いである。

       ―また、一番印象に残っている訂正は、「車輪の下」というキーワードが
       出てくる第四章の会話である。成績の落ちたハンスを神学校校長が呼び
       出し、勉強の約束を取りつけるときのセリフだ。


       ―ドイツ語で「車輪の下じきになる」という表現は<落ちぶれる>という意味
       をもつ。ひたすら前進していないと、後ろから来る車の車輪にしかれてしまう
       ように、人生の敗北者になるということだ。

        「歩みをのろくしないように。そうでないと、車輪の下にしかれてしまうよ。」
       ―要するに、少年をいたわるどころか、さらに鞭打って急がせるような、大人
       の残酷さを表すセリフなのだ。

       ―全体の出来については読者の判断を仰ぐほかないが、今の中学生も読める
       自然な訳文にしようと精一杯努力したつもりである。

       ―『車輪の下』に難解で暗いイメージを抱いておられる方や、そのためヘッセは
       苦手だという方がおられたら、どうか試しに手にとって頂きたい。
       私自身、訳してみて同書のイメージが一変した。今回の訳をきっかけに一人で
       も多くの方にヘッセを好きになって頂けるならば、これほど嬉しいことはない。

                    (第4巻責任編集者 伊藤 貴雄)


 * 各所で好評の新訳 『車輪の下』
 
   心に染み入る美しい日本語の訳文で、ヘルマン・ヘッセを
   味わってみては・・・・・
by sarah-gem | 2005-12-05 22:11